70年の時を刻む「時のプレゼンター」株式会社ナカザワのあゆみ
創業期
小さな時計修理店から始まった夢
1954年(昭和29年)12月、日本経済が戦後の混乱から復興へと歩み始めた時期に、株式会社ナカザワの前身となる中澤時計店が誕生しました。創業者の中澤幸平(現会長)はわずか24歳の青年でした。店舗面積はわずか四畳半の小さな時計修理店でしたが、ここから大きな夢が始まったのです。
当初は時計修理業務が中心でしたが、徐々に新品の時計販売も増え、着実に成長していきました。中澤幸平会長は、「知人から3万円(令和6年の約30万円)借りて、始めたわけです」と創業時の苦労を振り返っています。
1965年(昭和40年頃)
成長期
家族経営から企業への転換
1973年(昭和48年)湖南団地内の中央ショップに1号店を出店。1979年(昭和54年)には視力測定車を導入し、翌年には長男の実仟盛が入社。中澤幸平会長から「視力測定車でメガネ販売に回ってこい」と言われ、実仟盛は知り合いの会社や各町の役場を訪れては眼鏡の販売を行ないました。それは実際に回ることで、お客様と直接接して商売の難しさを経験させることが大きな目的でした。この頃から、家族中心で年商1億円を目指して歩み始めました。
1986年(昭和61年)5月、「家業から企業へ」を合言葉に法人化し、株式会社ナカザワが設立されました。同年、地元大手スーパー平和堂甲西中央店(滋賀県湖南市)に2号店を出店しました。
1988年(昭和63年)には、HOYAレンズ関西工場(甲賀市水口テクノパーク内)の竣工と同時に、HOYAのショールームを兼ねた県下最大級の本店を国道一号線沿いにオープンさせました。これ以降、ショッピングモールを中心に店舗展開を開始しました。
1986年(昭和61年頃)
拡大期
滋賀県内から全国へ
タイムステーションNEO河原町OPA店
1998年(平成10年)
1996年(平成8年)、設立10周年を迎えた当社は、年商10億円を超える成長企業へと発展しました。この成長を機に、活動範囲を滋賀県内から関西全域へと拡大していきます。
1998年(平成10年)、河原町OPA(京都市)にタイムステーション NEOをオープンし、新たな店舗コンセプトを確立しました。店舗デザインに空間デザイナーの西脇一郎氏を迎え、街の時計屋さんから斬新な次世代型店舗を作りあげました。
具体的には天井が文字盤の数字になっていたり、床にも時計の数字が並んでいたり、店舗全体で時計を表していました。これは、時計の機能的な側面だけでなく、贈り物としての価値を重視するという当社の新しい理念を体現するものでした。
2000年(平成12年)、中澤実仟盛が代表取締役に就任し、タイムステーション NEOは関西圏を超えて、東海や関東へと進出していきました。
挑戦と克服
困難の時期を乗り越え、アジアへ
2004年(平成16年)、イオンモールりんくう泉南店(大阪府)への出店を機に、全国各地のショッピングセンターへの出店を開始。翌2005年(平成17年)には、メガネチェーンの株式会社メガネトップと包括業務提携を結び、alookや眼鏡市場のフランチャイズ展開を開始しました。
2007年(平成19年)、22店舗もの大量出店を行いましたが、リーマンショックの影響で業績が悪化し、約10店舗の閉鎖を余儀なくされました。しかし、全社一丸となってこの苦境を乗り越えたことで、会社の絆はさらに深まりました。
2014年(平成26年)、当社は海外展開という新たな挑戦を開始しました。1月にベトナム、4月に中国、6月にカンボジアと、アジアへの進出が相次ぎました。この海外展開に伴い、国内店舗でも40名以上の外国籍従業員を採用し、インバウンド需要への対応と将来の海外店舗運営人材の育成を進めていきました。
変革期
コロナと事業戦略の転換
2021年(令和3年)、新型コロナウイルスの影響で新規出店が停止し、ショッピングセンターの営業時間短縮や休業により、店舗運営が大きな打撃を受けました。この危機を克服するため、当社は事業戦略の転換を図りました。
まず、グランドセイコーなどを扱う「GSショップ」を30店舗に拡大し、中高級腕時計販売に注力しました。また、サクラクレパスとコラボした100色展開の「クレパス柄トケイ」をカスタマイズできる専門店TokiiRo 文具×時計(東京都渋谷区)を表参道にオープンし、さらに東京駅や池袋駅構内でのポップアップストアによる短期集中型販売も展開。愛知県の老舗ガラス食器メーカーの石塚硝子株式会社とのコラボレーションによる商品開発をスタートさせ、アデリアレトロウオッチなど、オリジナル商品の開発を積極的に推進しています。このように、時代の変化に対応した新たなビジネスモデルの構築に取り組んでいます。
将来展望
多角化とフランチャイズ展開
現在は、全国のイオンモールを中心にインショップとして展開していますが、今後は時計や眼鏡の販売に留まらず、業態の違うフランチャイズ展開も視野に入れて新たなシナジー効果を創出していきます。また、AI制御のわたあめ機など、人手を必要としない新ビジネスモデルも一歩を踏み出しました。さらに、既存店舗の活用として、自販機の設置など、店舗スペースの効率的活用を模索しています。
未来へ向けて
技術と心のおもてなし
創業から70年、小さな町の時計屋さんは今や全国81店舗、海外3店舗を展開する企業へと成長しました。
接客業の基本である心のこもったサービスを大切にしていくこと、時計専門店としての技術を磨きネット販売にはない価値を提供すること、クレパス柄トケイに続く独自性の高い商品開発を進めること、海外店舗のネットワークを活かしさらなるアジア圏への進出を目指すこと、以上を今後の方針として掲げています。
当社は、これからも「時のプレゼンター」として、一人ひとりの人生の大切な瞬間をサポートし続けます。コロナ禍という未曽有の危機を乗り越え、創業70周年を新たな転換点として、さらなる成長と進化を目指しています。時代の変化に柔軟に対応しながら、確かな時を刻み、未来へと歩みを進めていきます。